子供孝行な親とは

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病院談話室
点滴台を押しながら現れた女性
 喫煙室にやってきた中年女性の点滴台には「絶飲食」の張り紙がぶら下がっていました。如何されたのですか?と聞くと「胆嚢結石です」と大儀そうにゆっくりと話されます。今はかなりの肥満体ですが娘時代はけっこう美人だったろうと思われます。「痛いのでしょうね?」と聞くと「5〜6分でおさまるのでこんな格好で我慢するのですよ」と痛みに耐えるポーズを見せてくれました。一週間近く固形物を食べていなくて、今日の診断ではまだ4日ほど駄目みたいですと寂しそうです。部屋で皆が食事をしている時はここにきて煙草をすうのです。結石以外にも両膝に水が溜まるのと、腰痛が出ていて、膵臓も少し悪いとのこと。

ソフトボールとバトン・トワリングをやっていた
 膝に水が溜まると聞いて何かスポーツをされていたのでしょうと言うと上記の答えがかえってきました。 「スポーツが原因と言うより、寝たきりの両親を自宅で介護をしているのが大変なんです」とポツリポツリと話し始めました。「兄弟姉妹は4人居るのですが両親は私に看てほしいと言うもので・・」父親が86歳、母親が82歳と言う事で、50歳前後と思われる彼女は末っ子に近いと考えられます。デイケアーでみてもらったり、市のヘルパーさんが来てくれるので何とか買い物や家事ができると言う状態です。私が入院してからは最近結婚した一人息子の嫁が看てくれています。とても明るい娘で、自分から同居すると言ってくれて、会社勤めもしているので「苦労かけてすまないね」と電話したら水臭いと叱られたんですよと嬉しそうです。息子夫婦にだけは私と同じ苦労をかけたくないので老後は施設に入るつもりです・・・

 実はこの後で同室のおばさん達からとんでもない話を聞きました。息子さん夫婦が殆ど見舞いに来ないし、主治医が病状説明をするので家族に来てほしいと伝えても何度もすっぽかしたりと、傍で見ていても気の毒で・・・・ と全く話が違うのです。複雑な気持ちになりました。

沖縄県の男性が長寿4位から26位に転落
 本土の外食産業が国道58号線沿いに並び、スーパーマーケットの食材も本土と同じようになり、沖縄の伝統的な食文化が変化し始めたせいかなと思いましたが、そんな簡単な理由だけでもなさそうです。長寿日本一になった岐阜県の和良村では、村営の診療所の医師が予防医学に力を注いだと新聞には掲載されていました。この医師が来るまでは、肺病の巣としてワーストの部類だったと言うことなので今回の日本一は大変な快挙と言えます。

元気な長寿か寝たきりの長寿か?
 女性については沖縄県が全国トップの座を守っていると言うことでその気候風土・食文化がプラスに働いていることは確かです。介護の苦労話を聞いて、統計上の長寿は自立した日常生活のできるものか、誰かの介護があって生き長らえているものかが気になり始めました。面倒見の良い子供を犠牲にした長寿を数字に入れない場合、全国の順位がどう変わるか興味のあるところです。

 冒頭タイトルの「老いて倒れたら三日で死ぬべしは」現在寝たきりの老人の事を言っている訳ではありません。これから老人と言われる年代を向かえつつある者は少なくとも家族に迷惑をかけずに、自立した快適な日常生活ができるだけの健康を自分で獲得すべきだと思うのです。そして最後は三日寝込んでこの世からおさらばしたら、子供孝行な親と自慢できます。

誰もがお金をかけずに健康でなくては
 全国に数人しかいない歯科医に高い金を払って安全な歯に入れ替えてもらうとか、高価な○○セラミックを買って結界を張るとか、特別な製法で作られる高価な食品を取り寄せるとか、高額な費用を払って特別な健康トレーニングに参加するとか・・・金と暇の有る人にしかチャンスが与えられない健康では駄目だと気付きました。

 お金をかけず誰でもが普通に生きているだけで、死の直前まで通常の日常生活が送れる方法が必ずあるはずです。たかだか50年前の日本ではそれが当たり前だったのです。「おばあちゃんが便所で倒れた」と騒いで、その2〜3日の内に葬式があったと言う記憶が残っています。幼稚園に行く前だったので3歳ぐらいだったのかもしれません。その直前まで針仕事をしていた祖母の姿も鮮明に覚えています。

まず吐き出すことが必要
 るん・るの呼吸をヒントにその答えを考えてみると、日本人が戦後溜め込んできたものを一度全部吐き出すことが必要なのかもしれません。医療、衣、食、住、健康、栄養、土地、農業、環境、報道、スポーツ、経営、福祉、政治、教育、経済、死生観、宗教、幸せ・・・・について私達がこの50数年に溜め込んできた常識、思い込みを一度とことん吐き尽くして、次に自然に入ってくるものは何か?
 必要最小限のものが正解として残るような予感がします。

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